石田智郁氏によるオリジナル短編SM小説。
女王様の女王様たる思考、M男の心のゆらめきをより深く感じ取ってください。

クインズ初作品「美脚に服従」と「白い脚線美」は動画連動企画です。

【我が身に降り注ぐ寵愛 File.002】
2016.8.26掲載


"ピンポーン"

部屋のチャイムが鳴った。
慌ててTVを消し、煙草も揉み消した。

イヅミという娘は、どんな態度で接してくるのだろう。
いつも思い切り従順なM奴隷として、女王様を迎え入れる。
叩かれたり痛い思いをしないために練った自分なりの対策だ。

チャイムは鳴ったのだけれど、入ってくる気配がない。
迎え入れろ、という事だと察したので、急いでドアを開けた。

「初めまして、山田。」

とびきりの笑顔だった。心が蕩けそうになる。
HPでの仏頂面とは真逆の慈悲深い笑みを湛えていた。
声はしっとりと濡れたハスキーさで、高くも低くもなく、ただ艶めいている。

あまりジロジロ見てもいけないと、慌てていつもの行動に移った。
これさえやれば、大概の女王様はイチコロだ。

「イヅミ女王様、初めまして!私、山田と申します。
本日の御調教、宜しくお願い致します!」

冷たいタイルに小さく縮こまって土下座スタイルをとった。
そして、ひたすらに頭を上げずにいる。
新人さんは大概驚いて、頭を上げる事を命令する。

ところが……
全く無視をされた。

ピンヒールを履いたまま、部屋に入っていった。

頭を上げた目の前には、調教用のバッグが置かれた気配がする。
持って来いという事だ。

えらく本物志向な御嬢さんだなぁと思いながらバッグを持ってソファーの方に向かおうとした。
その瞬間、部屋中に響き渡るような冷たい声が響いた。

「動くな!」

先程の艶めいた声とは全く異質の棘のような言葉が飛んできた。
心臓が早鐘を打ったように苦しくなる。

「も…申し訳御座いません。」

自分で情けなくなる位、小さな声だった。
一体何なんだろう。

素人同然の女王様とやらだとタカをくくっていたのに、今迄通りやれば楽しい60分を過ごせるはずなのに、冷や汗が止まらない。

「勝手に土下座していたのはアナタ。…鬱陶しい。
けれどそれよりも鬱陶しいのは、勝手に動き出す事。」

土下座する自分のすぐ耳元で囁かれた声は、冷淡なようであり、淫靡な響きを孕んでいる。
そして、ふわりとほんの少しだけ馨った香水の匂いかシャンプーの匂いが、危険な薬でもやっているかのように思考能力を奪おうとしてくる。

「頭を上げて私の前にいらっしゃい。」

突然離れた所から命令をされた。
ソファーにゆったりと腰掛けている彼女は、自分の中に確信を与えた。

「よ…ようこそ、おいで…下さいました。 本物の…女王様…イヅミ女王様。」

声が掠れてしまう。
びびっているのか?…自分に問うてみても釈然としない。

「何それ?みんな本物の女王様でしょう?」

首を傾げてほんの少し微笑んだイヅミ女王様に見惚れた。
さっき「動くな」と冷たく言い放った声は、この娘が出したのか?と疑いたくなる。

「いえ、私は…貴方に会う為に旅をしてきたような…そんな気が致します。」

(つづく)

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